2020
11.29

【相談事例】繰上返済のタイミングと目標額のシミュレーションして将来の選択肢を増やす

マイホーム, 不動産コラム

マンション購入にあたり、住宅ローンの組み方や返済計画、持分割合と贈与税のこと、購入後の戦略や不動産の活かし方などの相談がありました。予め想定して準備や対策をしておくことは、後に大きく違う結果となります。マイホームやマンションの購入はゴールではなく、あくまでもスタート地点だからです。

固定金利を選ぶべきか、変動金利を選んだ方がいいのか

住宅ローンの金利タイプの選びかたや、固定金利と変動金利の総返済額の差異、また繰上返済の効果や購入後のライフプランや懸念点等のご相談をいただき、各シミュレーションを行いました。

固定金利も低金利だから安心安全と思う人が多い

一般的に、よく推奨されるのは固定金利かと思います。

  • 返済額が一定だから安心
  • 金利上昇のリスクがない
  • 家計の収支計画がたてやすい

皆さん一番不安なのが、やはり金利上昇リスクかと思います。

私はFP(ファイナンシャルプランナー)と住宅ローンアドバイザー、不動産コンサルティングの資格をもっていますが、それぞれに観点も違えば、見方や戦略も違います。

多くのファイナンシャルプランナーは固定金利推奨派ですが、住宅ローンアドバイザーの観点からみれば、固定金利と変動金利にはそれぞれメリット・デメリットがあり、また人によって向き不向きがあります

写真の比較プランは、固定金利と変動金利のパターンの他、保証金を一括前払いにした場合と金利に0.2%上乗せした場合のパターン、それと、金利が上昇した場合の仮説シミュレーション、繰上返済した場合の差異をまとめたものです。田中さん(仮名)の場合は、固定金利を選んだ場合、変動金利に比べて総返済額が約640万円多くなりました。

変動金利を選ぶのが適している人もいる

田中さん(仮名)の場合は、

  • お子さまがいないため教育費の心配がないこと
  • 当面、共働きの予定なこと
  • 年収による住宅ローン返済比率にゆとりがあること

上記により、変動金利を選択して繰上返済を戦略的に行い、元本をより早く減らすことが一番効果的という結果がでました。

繰上返済を視覚化する

どのタイミングで、いくら繰上返済をするのかによって、短縮できる期間や利息軽減効果も違ってきます。

繰上返済は早い段階で行うと効果的ですが、試算の結果、3年早く繰上返済を行うと約17万円の利息軽減効果がありますが、完済までのトータルでの違いは約8万円と、効果はごくわずかでした。よって、住宅ローン特別控除の適用期間が終わったタイミングで、ある程度まとまった繰上返済を行うことを、まず最初の課題としました。

そして、定年までに完済する場合のベストな繰上返済額、ゆとりをもった場合の繰上返済額の目安を試算し、毎月の貯蓄目標額も算出しました。

ただし、上記はあくまでもシミュレーション上の想定です。

実際の償還は利息計算や開始時期によって誤差が生じるため、実際に金融機関から償還表が届いたら、それをもとに、繰上返済をした場合の金額と期間短縮効果+利息軽減効果の見方も覚えていただきました。

購入後の対策と準備

長期にわたる住宅ローンの返済。年月が経過すれば、社会情勢や経済は当然に変化するでしょうし、病気や就業に対する懸念や仕事の状況に変化があったり、不測の事態にも遭遇するのが人生です。そのため、これらを予め想定した上で、対策や準備を意識しておくといいでしょう。

金利上昇のリスクの不安と対策

変動金利の場合、金融機関が半年ごとに金利を見直し、金利が上昇した場合は最大で25%(5年間据え置き)上がる仕組みです。もし5年ごとに25%ずつ上がったとしたら・・・これは誰もが不安でしょう。これまで20数年間はほとんど金利が変わらずでしたが、やはり先のことは不透明です。

これを想定するのは、社会情勢や経済の動向を把握し、指標を定期的にチェックするといいでしょう。低金利が続き、ゼロ金利やマイナス金利で誰もが「賃貸か購入か」の選択肢がもてるようになった今、この先金利が上昇し続けたらどうなるでしょう。

あくまでも仮説にすぎないですが、金利が上昇して4%まで上がった場合のシミュレーションもしてみました。

この結果、早めの段階で繰上返済を行うことにより、金利が上昇しても十分対応できる体力があることが分かりました。元本が少なるなるほど利息の額も減っていきます。繰上返済を行えば、たとえ金利が4%に上がったとしても、総返済額は全期間固定金利よりも減らせることがこのシミュレーションの結果から判明しました。

仮説の立て方次第で結果も大きく変わってきますが、過去30年間のプレイムレートの推移を参考にしました。

病気やケガなどの健康リスク対策も必要

中年期以降は病気などで働けなくなる可能性も視野にいれておくといいでしょう。田中さんの場合、どちらか一方が働けなくなったと仮定した場合、住宅ローンの返済を含めて、何とか生活を送れる返済比率でした。

また、社会保険に加入しるため『傷病手当金』が支給されるため(申請が必要)、さほど深刻に考えなくて良さそうですが、それでも不安な場合は就業不能保険や所得補償保険に加入する、という選択肢もあります。

年金受給開始が70歳になる可能性が高い

先に支給される比例報酬分も廃止され、もし60歳で定年の場合は10年間、65歳が定年の場合は5年間の生活費を準備しておく必要があります。繰上返済を頑張りすぎて、定年を迎えた頃に資金がなくなってしまうのも問題です。1回目の繰上返済が終わったあとは、定年対策も視野に入れて、計画を再度見直すといいでしょう。

いくらくらい用意しておくべきかは、今の生活費の3/4×定年から70歳の期間で凡その目処がたてられます。

住宅ローンの返済が済んだ分は資産となっていきます。
20年後に売却したときと、賃貸で貸したときの予測価格を今の相場から試算して、物件のポテンシャルである資産価値の予測をたてることで、定年後のイメージや、可能性のある選択肢、そして今後の優先順位と対策をとれるよう視覚化したものが上記の写真です。

田中さんの場合、これまで計画的に預貯金をしてきたことで、今後もそのスタンスを維持することで、定年までの完済も可能です。また、長年にわたり厚生年金に加入していたことで、年金での生活で問題ないと推測されます。いい物件を選択したことで、今後何かあったときでも資金に換金しやすいでしょう。

一方、課題点は”定年から年金受給までの生活資金の準備”と”健康リスク”といえるでしょう。

今後の生活や資産の状況を把握する

物件の持つ資産性により将来の選択肢も違ってきます。田中さんの場合、資産価値の落ちにくい物件を選んだことで、売却しても手元資金が残るため、いざという時は売却する、という切り札にもなります。

とれる選択肢があるほど楽になる

万一、返済が困難になった場合は売却するという選択肢もあります。シミュレーションした複数の償却表をみても、

住宅ローンの残債額 ≦ 物件の売却予想価格

となるため、最初の繰上返済をクリアできれば、いざというときはその後の生活資金に十分対応できそうです。

例えば、仕事が落ち着き、都心から離れた場所へ住み替えする、という選択肢もあります。売却してもいいですし、賃貸で貸したとすると、家賃収入で住宅ローンの返済を行いながら収入源を増やすこともできます。

例えば、老後に自立した生活が困難になった場合は、マンションを売却した資金で老人施設に住み替えすることもできるでしょう。

そう考えると、2度目の繰上返済に向けて準備した資金を、住宅ローンの完済に充てずに他の方法で活用する、という選択肢もとれるのです。

  • 2回目の繰上返済して完済することも可能。
  • 繰上返済資金を、生活資金にプールしておくこともできる。
  • その資金で収益物件を購入して、収入源を増やすという選択肢。
  • 賃貸に出して、生活資金の足しにする。

と複数の選択肢が考えられます。

選択肢が多いほど、いざ不測の事態に遭遇した時でも対応できる体力があるということ。それが可能となった大きな理由に、自己資金(頭金)を準備してきたことが功を奏したといえます。

生活を楽しむことが最重要

住宅ローンは借金です。そのため、重責を背負うということにもなりますが、その反面レバレッジを活かして投資ができる、という性質を持ち合わせています。不動産や会社経営、資産家の節税対策などには、敢えて効果的に借入金を活用します。

実家で暮らす予定がない限り、生きている間は家賃がかかります。年金生活で家賃を払うのは負担が大きいし、高齢者の入居申込みは、まだまだ難しいのが現状です。

そう思えば、仮に定年までに完済した場合は、その後は家賃がかからないため、そのための投資ともいうことができますし、いざという時は自己資金に換金して、それを元手に再出発できるわけです。賃貸のように払って終わりではなく、払った分自分の資産に替えることができるのです。

だからこそ、あまり返済返済・・・と負担を抱え込まずに、生活そのものを楽しんでいただきたいと願っております。一緒に歳を重ねるパートナー的存在ともいえます。状況が変わってきたら、またいつでもご相談ください。

以上、今回は田中さんの事例をあげてみました。